ドイツのジュエリー・アーティスト 西林佳寿子さんとの座談会開催しました

ドイツのジュエリー・アーティスト 西林佳寿子さんとの座談会開催しました

Kazuko Nishibayashi ウェブサイト

2017年3月8日(水)シンコーストゥディオ世田谷ショップにてJAJイベント「ドイツジュエリー・アーティスト西林佳寿子さんとの座談会」が開催されました。
参加人数を絞った座談会でしたが、とても濃厚なディスカッションが交わされました。
このイベントのご案内はこちらでした

アートの役割とは?今ジュエリーができることとは?
今回は少々アートよりの話題となりましたが、ジュエリーに携わる様々な分野の人間が集まる、意義あるものとなりました。

アートジュエリーも、一般的なコマーシャルジュエリーも、つまるところ、どうやって買う方の理解を得て新しい価値を提案できるのか?
ディスカッションの様子を、一部ご紹介します。

ドイツのジュエリー・アーティスト 西林佳寿子さんとの座談会

ドイツと日本のコンテンポラリージュエリーの捉え方の違い

(西林)
私はおそらくアーティストというようりどちらかと言うとデザイナーなのだと思います。
ドイツでは、人と同じものではなく、人と違うものを身に着けたいという人が多く、ギャラリーでジュエリーを買うということが、普通の光景になっています。
私の場合は、10くらいのギャラリーに作品を委託していて、売れると代金が振り込まれます。それ以外に年に何回かヨーロッパのギャラリーで展覧会、近年は年に一度日本でも展覧会をしています。

また、ドイツには、コンテンポラリージュエリーをオブジェとして家に飾っているコレクターが確実に存在していて、コンテンポラリージュエリーのマーケットというのがきちんと確立されています。

(参加者)
日本にはまだそういった、市場がないけれど、この先若手のジュエリーアーティストたちはどうしていったらいいのでしょうか?

(西林)
今消費社会は「モノからコト」に移行して来ていています。

アートの世界でも、パフォーマンス、インスタレーションのように過程を見せたり、アートフェスティバルのように、コミュニティにと関わったりするあり方が注目されています。

それは、実は日本の工芸の*「用の美」にと感覚的に近いものがある、つながっているような気がしています。
若い世代は新しい視点で、アートと工芸、その他のものを組み合わせて、なにか今までに無いものを生み出せるのではないですか?
結局自分ができることはこの道以外になく、私もたくさんのコンプレックスをかかえているけれど、ただただ自分の行く道をひたすら歩んでいくしかないと思っています。
皆それぞれに道がある。

その道は1つではなくて、皆違っていい。

*「用の美」 ・・・ 1926年に始まった民藝運動で 柳宗悦 が日常的に使われるものにこそ、美しさがあるという考え方。

ドイツのジュエリー・アーティスト 西林佳寿子さんとの座談会開催しました

アーティストの役割とは、これからのジュエリーは

(西林)
今の時代、アーティストに今求められているのはステイタスやきらびやかさではなく、もっと感覚的な感性的なものではないかと思います。

(参加者)
以前はジュエリーというものが、成功の象徴として華やかに身につけるものであったようですが、今は違う。
むしろ、感性や、創造性などなどが求められている気がします。だからこそ、この閉塞感に満ちた時代に人の心を救うのは「ジュエリー」ではないかと確信しています。

売れる、利益を上げていくにはどうしたらいいか

(参加者)
なんとなく日本では、アーティストは利益を追求して来てはいけないという雰囲気があったけれど、やっぱり正当な評価の結果として、健全にお金を稼ぎ、次につなげるために使っていくことだと思う。

(参加者)
利益を上げて、きちんと税金を払って社会的な責任をはたしていくことは大事で、アーティストといえどもその構造や感覚を知っていることは大事だと思います。

(参加者)
そのためにはどうやって、新しい価値を最終的な消費者に伝えていけるか。そこが今とても難しい。

(参加者)
けれど、確実に今お店にやってくるお客様の要望が変ってきているように思います。
働く女性が増えて、意見がしっかりしてくると、人と同じものを身につけるのはいや。
自分ならではの信条やライフスタイルに合ったものと出会いたいと考えていると思うのです。確実に要望や要求はすでにあります。
そこを、いかに今の時代っぽくつなげていくかだと思います。

ドイツのジュエリー・アーティスト 西林佳寿子さんとの座談会開催しました

今まで、アーティスト、クラフトマン、小売の人たちがこんな風に、垣根を越えて熱く討論できる場所があっただろうかと非常に興味深く、また感慨深く感じました。

新しい発想や、ビジネスのネタは、分野をまたいだときにこそ、生まれると思っています。

こういったアーティスト系のイベントをすることもあれば、クラフトマン系のイベント、をすることもありますが、お互いを興味を持って勉強できたらいいと考えています。

しいて言えば、全く分野違いのものとジュエリーを結びつけたり。そうすることで、話題性や、新しい価値に最終消費者が気づくのかもしれないと考えています。

くしくも昨日3/8~14はドイツで、ジュエリー・アーティストの祭典 SCHMUCK 2017-Munchi Jewelry Weekでした。ミュンヘンの町中でアート&クラフト ジュエリーに関する展覧会やイベントが開催されます。
アートジュエリーの世界は、日本では、一般的な消費者には、関係ないと思いがちですが、その意識を変えていく必要があるように感じています。

それは素材価値よりも、デザインや、創造性にお金を払ったほうが、クールという感覚が先進国の社会の中では、根づいてきているからです。

今後も、情報を提供、企画していきます。
 

ジュエリー・アーティスト・ジャパン 米井 亜紀子