JAJ ジュエリーって何だろう後半

【リポート】JAJウェブディスカッション-1.デザインって何だろう?後半

2020年7月2日に行われた、「JAJウェブディスカッション-1.デザインって何だろう?」後半です

 

【7/2 JAJウェブディスカッション- デザインって何だろう? 後半】前半を読みたい方はこちらから

後半は、「ブランドジュエリー」の編集長の渡辺郁子さん。

シドニーから、日本に留学、自分の制作活動を続けながら、日本のマリッジリングの会社に長く在籍、彫金教室などを経て、シドニーに戻り制作活動をしている、田中フィリップあさとさん。

若手で、ジュエリーブランドを立ち上げて活動をしている稲井つばささん、のディスカッションに移ります。

 

米井

若い方に、色々意見を言っていただきましたが、長年ジュエリー業界を編集者として方としていかがですか。

 

渡辺

皆さん本当に真剣に考えてるんだと思って、びっくりしました。

 

米井

渡辺さんは仕事柄、様々なジュエリーの会社の方にお会いすることが多いと思うのですが、このコロナを境に、ジュエリーのデザインを考えて行こうという動きはありますか。

 

渡辺

私も実は、実際に会社の方には会えていなくて、ほとんどZoomなどのオンラインでお話しています。

その代わり、海外のウェビナーに週3回位、頻繁に参加するようになりました。

日本と海外との温度差がものすごくありますね。

海外の方が言うには、

こうやって人と近く会わなくなって、どうやってジュエリーを売っていくかということに対して、

ジュエリーを

使い捨てとかではなく、量産品というモノではなく、本来のジュエリーの価値というものを、見直していったらいいんじゃないかという話は結構よく出てきます。 

本来のジュエリーの価値を考えていきましょう。

原点に戻ってみましょうという言葉をよく聞きます。

ずっとメディアをやって来ていて、人の価値観は、人によって本当に違うから「これがいいよ」っていうことは言えないと、とても思います。 

やっぱり日本の女性たちがジュエリーを見るたり、知ったりする機会というのが、圧倒的に少ない。

私が、昨年WJJ(ウーマン・ジュエラーズ・ジャパン https://womenjewelersjapan.com/)を立ち上げたのは、もっとジュエリーを知ってもらうために、お話したり、見せていったりしたら、日本の女性たちの考え方や見方が、色々な意味でもっと広くなって、変わってくんじゃないかと思ったからです。

日本は、ファッションにしろ画一的ですよね。

そこで個人が、もっといろんなことを選べるようになったら、人の目を気にせずになったら、いいのかなって思ってるんです。

コロナがそのことを考える原点になるとも思います。

 

米井

稲井さんは、現在自分のブランドを立ち上げて活動をしていますが、コロナのデザインへの影響はどうでしょう。

制作しているブランドはどんな感じでしょう。

 

稲井

私の場合、コロナ前も後も、基本的には変わらないですね。

コンセプトでは、ジェンダレスについて一番重きをおいています。

造形としては、自然物や抽象彫刻などからインスピレーションを得ているブランドのジュエリーをつくっています。

 

女性らしさというものに、昔から抵抗があって、かといって男性の無骨なテイストも受け入れられない。

女性でも付けられる、男性でも着けられる、けれど無骨になりすぎない。

そういうモノを目指しています。

 

米井

では、シドニーからフィリップさん。

フィリップさんは、「英語deジュエリー!チャンネル」で、ジュエリーの制作過程を見られる動画制作もなさっていますね。

 

オーストラリアの現状はどうでしょうか。

 

田中

今働いてる、ブライダルを中心としたオーダーメイドの会社が、そこまでデザインについて、コロナ以降変わったかって言ったら、はっきり言って変わってないですね。

というのは、結婚したい人は絶対いるわけだし、その結婚する時期がずれるだけであって、むしろその間が空いた分、戻ってくるのが早い感じがあります。

 

ただ、ロックダウン中は、やっぱりお客さんも移動しなかったし、来店しないでZOOMとかスカイプとかで、打ち合わせしてみたんですが、やはり指につけた感触や石の色の感じなど、うまく表現して見せられないことがあって、あまりうまく行きませんでした。

とはいえ、このコロナで感じたのは、

オンライン化が加速したらっていう風に思っていうこのプラットフォームで利用者も増えたしなんか聞いたんですけどそういうわけでその

 

生産者と購入者の距離が今までより近くなった気がします。

先ほどの話とは相反する部分もあるのですが、気軽にオンラインで何かできるんじゃないかなっていう印象はありますね。

 

その例としてこないだオーストラリアのパースというところで、お酒やさんをやってる人がズームでお酒の試飲会をやるっていうことでした。

前もって、参加する人たちにお酒を購入して頂いて、その酒を目の前に、銘柄ごとにお酒の説明をするそうです。

あとは、ギャラリーが作家さん紹介するというので、インスタでストリーミングして、作家が家から出られないから、工房で、どのように制作しているかを動画で伝えたり。

多分、以前だったら、もうちょっと大変っていうか、そういう考えに至らなかった。

でもこのコロナ禍で、それが急速にそのお客さんと生産者できる可能性を見せてくれた機会だと思います。

 

米井

制作者と買う人が、近い関係にあるっていうのは、これからのデザインのキーワードですかね。

 

田中

先ほど、`若い軍団ズ’ が色々話して、ありきたりなんですけど、デザインって、クライアントが問題やコンセプト、アイディアを提案して、それをいかに上手く形にするかっていうのが、デザインだと思っています。

ですから、まさにオーダーメイドのジュエリーってそれに尽きるかなと思うんですね。

デザイナーやそれをつくる作家さんが、そのお客さんの、クライアントの要望を汲み取って解釈し、形にするかっていうことだ思うのです。

そういう意味で、ジュエリーのオーダーメイドはずっとあり続けるのかなと思います。

 

米井

まさに、社会の要望を受け入れて、常に変化するという、デザインの本来のカタチですよね。

 

田中

ですから、作家とか制作者は、適応能力を試されるのかなと思います。

20年、30年前の時代って全然要望が違ったと思うのでずす。

ずっと固まったカッチコッチの頭で考えてると、進化できないので、常に新しいことを学んだり、知識を増やしたり、見ることが大事なんじゃないかと思いました。

米井

渡辺さんは、つくる側ではなく、伝える側だと思うのですが、中間的な立場の視点から考えると、ジュエリーのデザインってどういう風に今後行くんだろう、行くべきなんだろうって思いますか。

 

渡辺

モノって、生きるための必需品と楽しむためのモノの2つあると思うんです。

寒いからこのTシャツを着るのと、おしゃれしたいからきれいなブラウスを着る。

そこがデザインですよね。

人間って、いつも単純に T シャツだけじゃ物足りなくなってしまって、デザイン的なモノが欲しくなりますよね。

つまり、自分にとって、心地よいものということだと思うんです。

 

私がジュエリーを買うときは、まず外見のデザイン。

そして、そのデザインされた商品が、自分の生き方や、自分の人生で、自分にとって何なの?自分自身って何なのっていうところで、選択肢が絞られてくると思います。

「自分は何なの?」というのは、十人十色だと思うんです。

 

ですから、作り手だとしたら、自分のスタイルを大切にしながら、お客様がどういう人がいるかっていうことを常に意識しなければならない。

ジュエリーを身につけるのは、9割ぐらいの女性だと思うんですけど、女性はこの20~30年、ライフスタイルが男性よりも変わってきてるわけですよ。

それをいつも意識しながら、自分の自分もその中にいるかもしれないけれど、自分と違う考え方をする女性達もいるんだって、客観的なことも見ながらデザインを考えて行くことで、幅が広がると思います。

私も雑誌をつくるとき、自分の好きなモノをセレクトしますけれど、他の読者だったらこっちの方が好きなのかななどとも考えて、最終的にセレクトしていくわけです。

とはいえ、雑誌のスタイルをキープしないと、コンセプトがなくなってしまいます。

自分のコンセプトがありつつも、他の人を意識していく、そこにデザインがあると思います。雑誌作りと同じだと思うんですね。

 

米井

それでは、稲井さんは、自分でデザインということを考えたとき、これからどのようなものづくりをしていきたいと思いますか。

 

稲井

やはり、タイムレスなモノでしょうか。

流行性にとらわれず、モノとしての強度のあるモノにしていきたいと思います。

時に流されず、持った人が、愛着をもって使ってくれるものです。

一世代だけではなく、続けて使っていただけるモノですね。

 

ジュエリーって形として見えるモノなんですが、実は見えないモノがいっぱいあると思うのです。

そういう見えないモノを、いっぱいこめられるモノにしていきたいと思っています。

 

米井

ジュエリーが、社会に対してどういう風に役割を持っていけるかっていう話って、すごく難しいんですけど。

そういう話をすることが、あまりにもないって、私は感じていて、やっぱりそういうこと話さないからジュエリーっていうものが非常に軽いものに思われていると思うんですね。

その人の人生に、一人ひとりの人生に、すごく関わることができるのが、やっぱりジュエリーだと思うんです。

フィリップさんどういうふうに考えていますか。

 

田中

まさに、人生の節目節目にジュエリーです。

生まれた時にシルバースプーンー一生くいっぱぐれないように。

卒業した時に、プレゼントでジュエリーとか

誕生日やクリスマスプレゼント。

婚約指環とか。

その人の人生の節目節目でジュエリーが常にあるわけだし。

その人が亡くなった後でも、それが代々受け継がれていくっていうことがあるので、ジュエリー役目は必ずあります。

 

米井

こんな時ですから、「ジュエリーが社会にとって何ができるか」っていうことを、少し話したいなあっていう気がしまして。

 

田中

「社会に対してのジュエリー」何ですかね?

 

米井

人と人とのつながりが、遠くなってしまっているような気がします。

つくっている人と、つける人との繋がり。

私はジュエリーというのは、華やかな時にするモノというより、むしろ人を勇気づけるためという面が、非常にあると思うんです。

リフォームの仕事などを受けると、親、近しい人が亡くなったとか、そういう時にオーダーをする人もいるわけす。

 

田中

あの儀式として、ジュエリーはよく使われますよね。

例えばキリスト教でいう十字架とか、あるいはモーニング(Mourning=追悼)ジュエリー。

亡くなった人の爪だったり髪の毛を指輪やペンダントにする。それでその人をずっと忘れないというジュエリーですね。

 

米井

そろそろ時間も無くなってきたので、ほかに話がしたい人がいれば聞いておきたいのですが。

大島さんはいかがですか。

 

大島

私は、今年大学を卒業したばかりで、しかもコロナになってしまったので、あまり会社に行けていないのです。

ですが、ジュエリーの業界にずっといる方とは、また違う印象をお話しできるかもしれません。

 

今、ニュースなどを見てると、何が本当で、何がウソなのかすごい分かりにくいですよね。

「本物か偽物か」なんて、そんなに議論されることはないけれど、大切なことですよね。

 

またコロナになって、マスクが意味がないとか、トイレットペーパーがなくなるとか…

 

嘘が嘘であることも、分かりづらくなっている。

だから、本物であることの意味が減ってきていると感じます。

 

ジュエリーも、ジュエリーじゃなくてもいいのではないか、という考え方もあります。

 

本物・偽物のどっちが正解かってことではなくてー「偽物」という言葉は少し違うかもしれませんが-「偽物」っていうモノの価値づけを考えて行くのもいいのかなと思います。

 

「本物」である事の意味も確かに大切ですけども、本物とちょっと違うモノの価値づけを、その人にどういう意味を見出してもらえるか、それを考える時間があってもいいと思います。

 

これから私も、知識を増やしたり、考えたりして、ジュエリーを意味のあるモノ、いろんな角度からの人にとって必要なモノにしていければいいと思います。

 

渡辺

本当に皆さんと色々考えていて、今日はメモをしっかりとりました。

 

私は「ジュエリーは 前も向くためのモノ」と思ってるんです。

 

それが、普通のモノとは違うデザイン性が強いものは、なおさらですね。

 

作り手は、人を元気にするようなジュエリーを、つくってもらえたらうれしいなと思います。

 

米井

渡辺さんさすがです。

「ジュエリーは人が 前も向くためのモノ」

今日の話を、一言でまとめてくださいました。

今後も、機会を見てこういうディスカッションはしていきたいと思います。

今日はありがとうございました。

前半はこちら

スピーカーの紹介

[前半ディスカッション]

  • 大島由衣(おおしまゆい)

2020年3月多摩美術大学卒。今年4月より、大手オーダーメイドジュエリー会社勤務。

  • 丸山あゆみ(まるやまあゆみ)

新潟三条市
指輪工房チェルキオ 共同経営者 一級技能士 https://www.cerchio1923.jp/
技能五輪全国大会では3大会連続の受賞、ゴールドメダリスト。2007年 (有)洗谷貴宝入社、2014年指輪工房チェルキオ、独立開業 もっか、5歳と2歳のお子さんの子育てに奮闘しながら、仕事にとりくんでいます。

  • 宮本輝美(みやもとてるみ)

愛媛県松山市
2009年東北芸術工科大学卒。 オーダーメイドジュエリーの会社で和彫り・石留めの仕事に携わる。 現在は独立し日本のハイジュエリーブランドからの依頼を受けて仕事をしている。
https://terumimiyamoto.amebaownd.com/

 

[後半ディスカッション]

  • 稲井つばさ(いないつばさ)

2013年武蔵野美術大学卒。工房併設のショップでオーダーメイドジュエリーの制作、接客の経験を積む。2017年よりオリジナルブランド「neutra」スタート。https://neutra-jewelry.com/

 

  • 田中フィリップあさと(たなかフィリップあさと)

シドニー生まれのシドニー育ち。ニューサウスウェールズ大学応用美術ジュエリー科卒業。その後日本へ留学。2000年東京芸術大学美術研究科彫金修了。JJDA公募展や伊丹クラフト展など様々な公募展に出展。

ブライダルジュエリー会社勤務、友人と彫金教室studio crucible開校。7年前にシドニーに戻り現在ジュエリー会社勤務。そして、個人制作活動継続。

2003年 cloud creatorスタート。http://cloudcreator.com/

2019年 YouTubeチャンネル 英語deジュエリーチャンネルを始める https://www.youtube.com/channel/UCRQXikf5MC9hTzbJ74Y5Fnw

 

  • 渡辺郁子(わたなべいくこ)

INK Incorporation代表取締役Brand Jewelry 編集長Women Jewelers Japan 会長 
ジュエリー専門誌『ブランドジュエリー』の制作、販売。その他女性のライフスタイルに関わるテーマを中心に出版事業・広告制作事業。ファッション界の仕事を長く手掛け、ミラコレなどの世界のファッションシーンの取材をし、その後ジュエリー分野に。2019年ウーマン・ジュエラーズ・ジャパン設立。先月Brand Jewelry Web リニューアル、ジュエリーオンラインショップ開設準備中 https://www.brandjewelryweb.com/

【ファシリテーター】

  • 米井亜紀子(よねいあきこ)

シンコーストゥディオ代表 https://shinkostudio.com/。ジュエリー・アーティスト・ジャパン(JAJ)主宰https://jewelryaj.org/ 。街の宝石屋のおばちゃん。