【開催レポート】4「アプライドアートの 波がきているらしい 日本にいながら海外で活躍するコンテンポラリージュエリー・アーティスト達のトークセッション」

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「アプライドアートの 波がきているらしい 日本にいながら海外で活躍するコンテンポラリージュエリー・アーティスト達のトークセッション」その4

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2019年10月9日渋谷区文化センター大和田で、開催されたジュエリー・アーティスト・ジャパン(JAJ)主催「アプライドアートの 波がきているらしい  日本にいながら海外で活躍するコンテンポラリージュエリー・アーティスト達のトークセッション」の様子をまとめました。
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コンテンポラリージュエリー・アーティスト松浦峰里さんのプロフィールはページ下をご覧ください

ロエベクラフトプライズから

米井:

コンテンポラリージュエリー現場は、ヨーロッパと日本とどのように違うと思いますか?

松浦:

そうですね、海外だと展覧会やコンペを開催している人、アーティスト、ギャラリスト達のこの世界の裾野を広げたいという、ものすごい情熱が伝わって来ます。

もう一つは、アートには、アプライドアートというくくりがあって、19世紀半ばに、純粋に芸術的表現のみをもつものを「ファインアート」、それ以外のものを「アプライドアート」(;応用美術)といったように、分けようということになったのです。 機能のあるアートという意味では、建築とか、デザインとか工芸など、ファインアートのアーティスト以外のほとんどの人がアプライドアートに属しているということになっています。 そこには垣根がなく、自然と色々な人が関わってこの世界を盛り上げているというのが現状で、日本とかなり違う部分だと思います。

アプライドアートについて、わかりやすかったのが、今年夏に開催されたロエベの ロエベクラフトプライズだったと思います。

この動画がわかりやすいと思います。

内容は下記のリンクをご覧ください。

http://craftprize.loewe.com/ja/craftprize2019#archive

今年は日本で展示が行われ、草月会館のイサム・ノグチの石庭の間に作品が設置された新しいスタイルは新鮮な印象を受けました。

これはどんな分野って、言ったらいいんだろうな? ちょっと一瞬わからないような感じだったのですけれど、工芸でもあるし、アートでもあるし。 そしてその中にジュエリーもある。

Giampaolo Babetto Name of work: ‘Collana’ Category: Jewelleryr Materials: Gold 750, pigment

ああ、そうか、こういうのを「アプライドアート」って言えば、ちょっと気持ちが楽になるのかなって思いました。

ニューモダンクラフトとかいう感じでしょうか。

http://craftprize.loewe.com/ja/home

Genta Ishizuka  Name of work: ‘Surface Tactility #11’ Category: Lacquer Materials: Urushi, styrene foam balls, 2 way tricot, linen cloth

ロエベ財団のホームページには、スペインの大手新聞『El País(エル・パイス)』建築・デザイン担当評論家アナズ・サバルベスコワが、対話している動画が上がっていて興味深いので、ぜひ見ていただきたいです。

(対談参加者) エッセイストでロンドン・デザイン・ミュージアムの ディレクター   ディヤン・スジック 編物界の巨匠、テキスタイル デザイナー   ジョン・アレン ジュエリー アーティスト   ハイス・バッカー アナツ・サバルベスコアが伝統技術のあるべき姿、すなわち過去に忠実であるべきか、それとも時代と共に変化すべきかを問う

この動画の中で印象的だったのは、「新しい素材やそれに伴う技術が、今新たに多く出てきていると思うのですが、もっとそれについてエモーショナルでエキサイトする必要があるんじゃないか」っていうことを言っていたことですね。

ロエベクラフトプライズの目的を読んでみると

「その芸術的先見性と革新的な意志により、未来のクラフトの新しい基準を設定し、ユニークな才能のあるアルチザンを発掘します。」 とあります。

今年2019年は、今回は、漆芸の日本人の石塚源太さんが大賞を取りました。 入選した作品の中には、ジュエリーも3点ほどあり、どれも興味深いものでした。

日本は昔からほとんどがアプライドアート

アプライドアートはあくまでも言い方とかくくり方の問題で、概念として新しいわけではないと思うんです。

実は、日本のアートはふすまや刀の鍔(つば)、工芸品など、ほぼ実用的なもので、言ってみれば、ほとんどがアプライドアートだと思います。

ただ、「アプライドアート」という言葉でくくったことで、新しく生まれる意味は、工芸だとか、アートだとか、デザインだとか分かれて狭められていた領域が「アプライドアート」という言葉によって広がる。

実験的な試みとか、革新的なことが、やりやすくなったと感じています。 狭められているアートの実験的なことや、可能性みたいなことが「アプライドアート」という言葉を使うことで広がるんじゃないかなって思います。

ジュエリーが普段の生活とどうやってつながっていけるか

米井:

アートがもう少し、一般の人たちが触れられる所にくる、普段の生活に、どのようにつながっていくかが、これからのテーマだと思います。 あまりにもアートが、アーティストよりだけではなくて、一般の人にももうちょっと触れられる場所に来るって言うか、理解しやすいっていうか、そういう意味では一般ジュエリーとコラボレーションがあったりしてもいいし、普段の生活とどうやってつながっていくかというのもの大切だと思います。

松浦:

コンテンポラリージュエリーもあくまでジュエリーの一つの分野なんです。 コンテンポラリー(アート)だからいいんだとか、コマーシャルジュエリーはだめだとかそういうことではなくて、あくまでもジュエリーの 今現在を生きている私達が「こういうものを身につけてみるのはどうだろう」という作り手の提案や実験ということです。 そしてその中にはいろんな価値観があります。 それで素材も本当に色々だし、作り方やコンセプトの立て方も個々に違っていて自由であるということです。

若手へのメッセージ

コンテンポラリージュエリーと日本のことですが、 木目金(もくめがね)や金継ぎのワークショップが、今とても盛んに海外で行われていて、今日もいらっしゃってる鹿島布目5代目の鹿島先生の工房もインターナショナルな生徒さんがいっぱい勉強しに来ています。 日本には歴史を超えて残っている工芸の技術があって、それはとても海外の人には魅力的です。 海外の方は、そういうものを上手に取り入れて作品をつくっています。

ステファノロッシ/Stefano Rossi(伊)さん木目金のコンテンポラリージュエリー作品

 

是非日本の方こそ、日本の伝統技術をうまく使ってジュエリーを制作してみて下さい。

どんな社会を目指していったら、ものづくりしやすいのかを考える

松浦:

正しい答えが必ずしも一つではない。

お互いの違いを認めあって、共感しあうことを学べる。

そういうことは、ジュエリーだけではなくアート全般に言えることだと思います。

選ぶ人も自分の個性で、素敵だと思うのものを自由に取り入れる時代になっています。 この先、自由な発想でものをつくっていく、それを手にとってもらうには社会の中にゆとりが必要です。 「どんな社会を目指して行ったら、自分のものものづくりを続けて行きやすいのか」ということを考えながら、若い人たちにはものづくりをしてほしい。

だから、選挙にはぜひ行っていただきたいと思います。 投票の話題は唐突に感じるかもしれませんが、政治は身近な生活にとても影響力があります。

米井:

日本に住みながら、しかも静岡というちょっと不便な所に住みながら、果敢に海外に挑戦している、松浦さんは本当にパイオニアです。

世界は、いくらでもチャンスの門戸を拡げていると思います。 これからの人たちは、情報を取りながら自分で挑戦してみたり、あるいは 自分が挑戦しないまでも、そういう感覚をちょっと経験しに行くっていうのもいいかもしれないですね。

私は一般ジュエリーを販売してる方なんですけど 普通の生活にどこにアートが落とし込めるか、どこに幸せな一瞬を感じるかという意味では、デザインとアートの境目がなくなってきてる感じがするんですね。 だから一般ジュエリーもコンテンポラリージュエリー、工芸も境目を作らずに制作していくっていうのは必要なんじゃないかなと思います。 そして、日々話しをしていてお客様=身に着ける人たち自体の感覚が、非常にボーダレスになってきていると感じます。

松浦さん、ありがとうございました、とても意義のあるお話でした。 この後、二人のアーティストを加えてディスカッションに移ります。

→次に続く


「アプライドアートの 波がきているらしい
日本にいながら海外で活躍するコンテンポラリージュエリー・アーティスト達のトークセッション」


松浦 峰里(Mineri Matsuura)

【松浦峰里プロフィール】 コンテンポラリージュエリー・アーティスト 武蔵野美術大学工芸工業デザイン学科卒業。

<海外受賞、選出> 2019年 ALLIAGES Legacy テクニーク賞 (フランス) 2019年 Gioielli in Fermento 2019 Klimt02特別賞/AGC 特別賞(イタリア) 2018年 Comineli Foundation Aword, Seconda menzione (イタリア) Gioielli in ferment(イタリア・2017)/ 2016(Italy, Spain, NY, SOFA Chicago)

<作品収蔵> Espace Solidor 美術館、カンヌ、フランス

<海外エキジビション等> 2019年 Gioielli in Fermento イタリア、リボルノ   Espace Solidor美術館Legacy Award 展覧会 フランス、カンヌ   lla ricerca della qualità  イタリア、ピアチェンツァ

ウェブサイト http://mineri-matsuura.com/