【開催レポート】5「アプライドアートの 波がきているらしい 日本にいながら海外で活躍するコンテンポラリージュエリー・アーティスト達のトークセッション」

読み物

「アプライドアートの 波がきているらしい 日本にいながら海外で活躍するコンテンポラリージュエリー・アーティスト達のトークセッション」その5

  • ページ:
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • 6

2019年10月9日渋谷区文化センター大和田で、開催されたジュエリー・アーティスト・ジャパン(JAJ)主催「アプライドアートの 波がきているらしい  日本にいながら海外で活躍するコンテンポラリージュエリー・アーティスト達のトークセッション」の様子をまとめました。
前回をお読みになりたい方はこちらをクリック→ 4
コンテンポラリージュエリー・アーティスト前田朝黄さんのプロフィールはページ下をご覧ください

米井:

ここからは一部の松浦峰里さんに加えて前田朝黄さんと青木愛実さんにも加わっていただき、ディスカッションをしていきたいと思います。

まず前田朝黄さんのご紹介です。 前田さんは主にアメリカでの活動を中心に活動しています。

アメリカで作品展示を始めたきっかけを教えてもらえるとうれしいです。

前田:

日本の美大を卒業して、アメリカニューヨークのFIT(Fashion Institute of Technology)というファッション系の大学に一年留学しました。
FIT卒業後、アメリカには アートジュエリー専門のギャラリーがあり、その一つであるボストンの「Mobilia Gallery モビリアギャラリー」というギャラリーに自ら作品を持ち込んでみました。

気に入って扱っていただきるようになり、作品もすぐに売れて、それ以来ずっとグループ展、個展など長いお付き合いをさせて頂いています。

私はコンペには、ほとんど応募したことが無く、このギャラリーを通して美術館などにつながって行きました。

米井:

前田さんは、動画を制作したり、インスタグラムを活用していますよね。 インスタグラムは15,000人(2019/12では19,900)のフォロワーがいますね。(@morningyellow)

動画を積極的に制作して、前田さんの作品をとてもわかりやすく、表現していますね。 ちょっと見てみましょう。


                                                                                   A day of a train necklace/ sterling silver,k14, acrylic glass  Asagi Maeda

こちらの電車はネックレスなんですね。

非常に独特の世界観なんですが、その辺はアメリカでの捉えられ方っていうのはどんな感じでしょうか

前田:

やっぱりアメリカでもちょっと変わってるねって言われます。

美術館のキューレーターには30年以上コンテンポラリージュエリーに携わってきて、あなたのようなジュエリーは一度もみたことがない、と言われました。

説明する時に使われているのは「Narrative(ナレティブ)ジュエリー」という言葉です。
「Narrative=物語の」という意味です。
ジュエリーの中に物語があるという事ですが、カテゴライズすると、そうなるのかなあと思っています。

この「A day of a train」は ニューヨークのアート&デザイン美術館(MAD)とボストン美術館の両方に収蔵されています。 MADでは、映像も一緒に納品してほしいという要望があって、この映像を一緒に納めています。

私の作品は、人の描写など、細部が分かりにくく、物語も付いていて写真では伝わりにくく、動画が一番伝えやすいのです。

米井:

映像と一緒っていうのが非常にわかりやすいですね。
アメリカのお客様ってどうですか?

前田:

MADで毎年行われる「Loot」という、コンテンポラリージュエリーの展示即売のような、イベントがあるんです。 MADのキュレーターが選んだアーティストが世界中から毎年50人くらい集まって出展します。アーティスト本人が参加しなければいけないイベントで、アメリカの本当にコアなコレクターが集まって来てすごく楽しいイベントです。

Lootの動画

米井:

他にも今年はヨーロッパでも活動していましたね。

前田:

はい、オランダアムステルダムで開催された「シラード・アートフェアSieraad Art Fair 」には My day by day galleryというギャラリーのブースで出品させていただきました。

ローマではMy day by day galleryで個展を開催しました。

米井:

色々なギャラリーとつながっていますが、きっかけはなんですか。

前田:

2年位まえですかね、インスタグラムに少しずつ投稿していたら、ある日すごくフォロワーが増えたことがあって、それから毎日1作品ずつ上げていったんです。 そうしたら、フェイスブックやインスタグラム経由で結構連絡が来るようになりました。 色々な国から来ます。

一年以上つづけたら1万超えたんですね。1万超えると表示が100人ずつになってしまうので、ちょっと面白さが薄れてしまって(笑)最近はサボりがちですが。。。

                                            My day by day gallery

米井:

前田さんにとって、コンテンポラリージュエリーっていうのはどんな感じのモノですか。

前田:

コンテンポラリージュエリーについて答えるのは、なかなか難しいですね。

私の作品はちょっと外れていると思っているので。 自分のジュエリーのことでもいいですか。

ジュエリーって外側に身に着けるのモノなんですけど、 内面の心が外に現れてるような、身に着けたり、見たりすることによって人の心が動くような、そういうモノをつくりたいと思っています。

米井:

前田さんの作品のテーマっていうのが、日常のちょっとした事ですよね。 コンテンポラリージュエリーのカテゴリーとは外れているかもしれないけれど、それがすごく温かい。

前田:

想い出だとか、日常のちょっとしたことが大事なんだなあって、震災の時とても感じたんです。
日常のささいな当たり前のことが貴重なんだって、すごく思ったのです。
ジュエリーも貴重なものなので同じだなって。

米井:

海外に挑戦したいという若い人たちがいると思うのですが、アメリカはどうですか

前田:

私はすごくいいと思っています。

アメリカ人は面白いなと思うモノに本当に反応がいいし、それに投資しようという気持ちの強い国民だと思います。
アーティストの人が直接ギャラリーに自分の作品を持ち込むのも、全く問題ないです。
美術館だって問題ないですよ。 キュレーターさんにアポイントをとったりして。

ギャラリーの方から美術館の展示を企画してもらったりします。ギャラリーと美術館とのつながりが強いと思います。

→次回に続く


「アプライドアートの 波がきているらしい
日本にいながら海外で活躍するコンテンポラリージュエリー・アーティスト達のトークセッション」


前田 朝黄(Asagi Maeda)

【前田朝黄プロフィール】コンテンポラリージュエリー・アーティスト 東京造形大学彫刻科。GIA (Gemological Institute of America)/ FIT (Fashion Institute of Technology)卒業((NY)女子美術大学講師。

<作品収蔵> ボストン美術館(ボストン)/ ミュージアム オブ アーツ&デザイン(MAD)美術館(ニューヨーク)

<海外エキジビション等> -個展- Oeno Gallery/ プリンスエドワード、カナダ (2019)/松屋銀座(2019年) My day by day gallery /ローマ(2018)/Sieraad アムステルダム、オランダ (2018) おかりや/銀座、東京 (2018、2016)/Mobilia Gallery /ボストン、アメリカ (2017、2011、2008) -グループ展/展示会- Mobilia gallery/ボストン、アメリカ(2004〜2019)/「Loot」MAD美術館/ニューヨーク(2018,2014,2012,2011) Gallerie MAZRO/パリ、フランス(2017) /Galerie Diane et Eric Lhoste /ビアリッツ、フランス(2012) National Ornamental Metal Museum)、メンフィス、アメリカ(2010) /SOFA ニューヨーク、シカゴ、アメリカ (2004-2009)

ウェブサイト  http://www.asagimaeda.com/

Instagram https://www.instagram.com/morningyellow/

A day of a train  https://youtu.be/20Iw-JR3rJc